代替タンパク質への取組み 2 – The Netherland Food Style

The Eating Style
The Netherlands Food Style

代替タンパク質への取組み 2
Future Protein NL 2

II.オランダの代替タンパク質エコシステム

オランダは、代替タンパク質の分野において世界の最先端に立っていると自負しています。しかし、オランダのタンパク質エコシステムを創り上げていくには、他国からの協力が不可欠です。

開放的で国際的な視野を持つオランダでは、私たちのエコシステムに加わり、一緒に未来のフードシステムを創り上げていく外国の企業を歓迎・招致しています。

オランダの代替タンパク質エコシステムは、エコシステムのあらゆる要素を備えており、非常に包括的で多様性に富んでいます。公共機関や民間企業が複雑なネットワークを構成しており、それらの協力とパートナーシップが成功の鍵を握っていると言えるでしょう。250社以上の企業に加え、公共機関や非営利団体も数多く活動しています。
オランダのタンパク質移行のエコシステムには、共同の取り組みが55以上あります。
下の図は、すべてを網羅しているわけではありませんが、この分野で活動している企業やその他関係機関を示しています。

公共セクター(地域、地方、国の政府機関)、投資や資本関連の機関、共有の研究所や生産施設、支援組織などがバリューチェーンのあらゆるところで力を発揮しています。またオランダには、基礎研究や応用研究に取り組む世界的に有名な研究機関、大学、科学系企業もあります。

オランダは、食品をはじめ農業技術の分野でもイノベーション、製品、ブランドの発祥の地として有名で、物流分野の機器メーカーや専門家が、バリューチェーンの生産や加工の部分で重要な役割を果たしています。また多くの消費者が食品を購入しているスーパーマーケットがオランダの主な小売環境となっています。

オランダが目指すもの
国家タンパク質戦略

「食料主権」を高め、輸入大豆への依存を減らすため、欧州委員会は各加盟国に国家タンパク質戦略を策定するよう呼びかけています。
2020年、オランダ王国農業・自然・食品品質省は「オランダの国家タンパク質戦略」を発表し、今後5~10年で植物性タンパク質と革新的タンパク質の自給レベルを引き上げることを目標に掲げました。
この戦略の主旨は以下の5つです。

  • 1. ジャガイモやマメ科植物など、オランダ産のタンパク質を多く含む作物の生産を増やす。
  • 2. 食品用、飼料用の植物性タンパク質源(マイコプロテイン、培養肉など)の開発に向けて研究やイノベーションを促進する。
  • 3. 飼料・食品に昆虫を使用するほか、残渣を有効利用する研究を進める。
  • 4. 残渣フローを活用し、効率を高めるとともに廃棄物を削減する。
     消費者の食品廃棄物を動物の飼料とする、または有効利用することは特に重要なカテゴリーと考えられる。
  • 5. 消費者の食生活における植物性タンパク質のシェアを増やし、動物性タンパク質と植物性タンパク質の生産・消費バランスを改善する。

戦略にはいくつかの具体的な目標が設定されており、内容は次の通りです。

動物の飼料に使用する植物性原料の大半をEU内で生産。

栽培

  • ・10万ヘクタールのマメ科植物栽培で2030年までに土壌を肥沃化。
  • ・持続可能なタンパク質(持続可能な飼料原料やタンパク質が豊富な作物の栽培)を生産する農家に報酬。
  • ・地元のタンパク質バリューチェーンとの緊密な協力と耐久力ある経済に貢献。

イノベーション

  • ・オランダは技術やタンパク質のイノベーションに強い実績を持つ。
  • ・2025年までに、美味しく持続可能で、かつ健康的な代替食品・代替飼料をEU内で増やす。

循環性

  • ・2030年までに、動物飼料の大半を残渣や人の食料とならないものを原料として生産する。
  • ・消費者の食品廃棄物は家禽類やブタの安全な飼料となる。
  • ・2022年までに、EUの法律で循環タンパク質源の安全な利用を許可する(家禽類やブタの飼料に昆虫や動物の粉を使用するなど)。※この目標は達成済み。

消費

  • ・食生活において動物性タンパク質と植物性タンパク質の健康的で持続可能なバランスを取る。
  • ・2030年までに消費者の食品廃棄物を2015年の50%に減らす。
オランダの国家タンパク質戦略について
オランダ王国農業・自然・食品品質省で働く3人の専門家より
植物性アグロチェーン食品安全理事会のEsther van Nes氏と Stefan Breukel氏
シニアポリシーメーカーで培養肉が専門のMargo Stam氏
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グローバルな課題に共に取り組む


「オランダはグローバルの課題を分かち合い、共にチャレンジしていくを目指しています。
そのため政府は競争力と革新力を維持し促進するため、9つの主要セクター(トップセクター)に投資しています。
そのひとつトップセクター アグリフードは、農業と食品の両分野のイノベーションにおいて世界でもトップレベルを誇っています。」

国際関係協力ディレクターのWillemien van Asselt氏
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オランダは、外国企業が他国からもたらす専門知識 や情報の付加価値を高く評価しています。
オランダ経済・気候政策省は、オランダ経済・気候政策省 企業誘致局(NFIA)とオランダ各地の地域経済開発機構からなる組織「インベスト・イン・オランダ」に、オランダ国内における外国企業の拡大支援を委託しています。新しい情報や専門知識をもたらしてくれる企業を歓迎し、それらの企業とオランダの代替タンパク質業界が共に成長していくことを期待しています。

食糧の未来を一緒につくる
Foodvalley NL

2004年に設立されたFoodvalley NLは、独立した国際プラットフォームとして、持続可能なフードシステムへの移行を実現するイノベーションを生み出しています。エコシステム、つまり未来の食糧に共同で取り組む国際的な組織や企業のネットワークの発展と強化に努めてきました。

Foodvalley NLのタンパク質移行のイノベーション責任者である
Jeroen Willemsen氏

「2050年には世界の100億人が味も良く安価で健康的、更には動物にも地球にも持続可能な食品を得られるようにする、というのがFoodvalley NLのビジョンで、これは人々の協力なくしては実現できません。」

Foodvalleyは、移行に向けた計画を立て、スケジュールに沿って組織や企業(スタートアップ、スケールアップ、大企業、投資家など)の案内役を務めます。イノベーションと機会を早期に特定し、その価値を認め、国際的なパートナー、専門知識、設備、優秀な人材、世界市場や資金へのアクセスを整えます。タンパク質移行、循環アグリフード、食品&健康という3つのイノベーション分野に力を注いでおり、起業、国際関係、人材、イノベーションのアイデア、共有施設などの分野でイノベーションサポートサービスを提供しています。これによりスピーディーにイノベーションが進み、企業が速やかに成長・発展します。

The Protein Community

The Protein Community (TPC)は代替タンパク質に関連する世界中の新規事業や大企業を結びます。特に、活気ある国際パートナーや、資本、優れた施設などと引き合わせ、知識やイベントを提供することで、イノベーションやビジネスの成長を促進しています。TPCは、オランダのヘルダーラント州、オーファーアイセル州、東オランダ開発公社(Oost NL)、Foodvalley NLの協力プロジェクトです。

参加団体は現在110社を超え、革新的なスタートアップや中小企業が約65%を占めています。15%はDSM、Kraft-Heinz、Unilever、Upfieldなどの大企業であり、残りの20%はシステムサプライヤーや知識豊富な専門家です。

オランダは協働を促進し、関係者同士を結ぶことを得意としています。そのため代替タンパク質におけるイノベーションの拡大を可能にする革新的な国であると言えるでしょう。
イノベーションや研究は大きな影響力を与える上では重要な要素で、例えば経験豊富な生産パートナー、物流企業、梱包業者、投資家も必要になってきます。関係者全員が力を合わせることにより、新しいタンパク質の生産技術、タンパク質の原料となる植物の栽培、消費者向け製品などにおいてイノベーションから市場投入までの時間短縮などが可能になります。
オランダの企業に加え、Beyond Meat、Meatless Farm、Enough、Oatly、Redefine 、Meatなど、国際的な食品会社がオランダでの起業メリットを認め、生産施設や研究開発施設を開設しています。

BO Akkerbouw

「BO Akkerbouwは、耕地作物を扱うオランダの協力組織です。この分野には合計150億ユーロの付加価値があり、BO Akkerbouwの12の加盟組織は約13,000の農家を含む企業約20,000社を代表しています。」代表のAndré Hoogendijk氏
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タンパク質移行の規模拡大
Fascinating

オランダは世界有数の農業地域です。何千もの農家が牛乳、ビーツ、じゃがいも、その他の作物を栽培し、小さな国土から世界に食糧を提供しています。同時にこの国はサステナビリティという複雑な問題に直面しています。
国の中心である農業セクターが、持続可能な社会と健康的な食生活に貢献しつつ経済的な利益を得るにはどうすればいいのでしょうか。
Fascinatingイノベーションプログラムでは常にこのような質問を投げかけてきました。
優れたコラボレーションプロジェクトの一例として、10年間のプログラムで民間企業と研究者を引き合わせ、100社以上の農業食品企業と行政が「未来の農業」を開拓しています。
健康的な食品を作るため栄養価の高い作物を持続可能な形で生産すること、つまりヘクタールあたりの栄養価を高めることが、未来の目標のひとつです。

FascinatingのクオーターマスターであるElzo de Lange氏と
フローニンゲン大学のビジネス開発者であるSven Stielstra氏
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出典:オランダ農業・自然・食品品質省