オランダのサステナブル農業
About Sustainable
Agriculture

はじめに
循環型農業のグローバルリーダーとして
オランダは農業・園芸・漁業のたゆまぬイノベーションにより、循環化実現に向け、世界を牽引しています。将来の食料供給を確保する唯一の方法は循環型農業への移行であるというもの、が私たちの一貫した結論です。
それではどのような継続が必要か。
実現に向けて、オランダ農業・自然・食品品質省(LNV)はビジョン(Vision)を策定しました。本ビジョンでは循環型農業への移行と、それに伴ってオランダに求められることを概要にして紹介します。そしてこれを実践に移す方法を見つけることが我々の務めです。
農家・栽培者・漁業者は、移行後も私たちの食料システムの基礎であり続けます。特に移行により、とりわけ大きな難題に直面し、多くを求められるであろう彼らですが、そうした難題を受け入れる覚悟と意欲を持っています。
オランダ政府のモットーは「未来への確信」です。
オランダ政府は、循環型農業に向への取り組みにおいて、農家、栽培者、漁業者、その他の事業者、市民団体と共に進路を定め、進んでいくことを確信しています。


現状
WHAT IS THE CURRENT SITUATION?
今まで、生産者から消費者に至るサプライチェーンは低コストで非常に効果的に機能していました。例えば、サプライチェーンで働く専門家の大半は特定の職業プログラムかさらに高度な専門プログラムで訓練を受ける、という世界レベルの科学的研究によって支えられています。
この緊密に組まれた教育・研究システムのおかげで、オランダは知識と生産の両面で常に優位に立っていました。そしてこのシステムにはコスト削減と生産量の拡大を重視するという特徴もあり、それが規模の拡大につながっていたのです。ただ、コスト削減と生産量の拡大は、生活環境の圧迫にもつながります。
オランダでは生物多様性、環境、飲料水の質、および、景観の魅力がその犠牲になっています。農家と市民 の間にも少なからぬ分断をもたらしてきました。市民は自分たちが口にする食品がどこから来るのかについてほとんど知らず、そして農家や栽培者は、自分たちの仕事が必ずしも高く評価され感謝されていると感じてません。
漁業者においても同様です。
社会における一次セクターの位置付けの構造的変革を求める理由が数多くあります。
幸いにももうすでに、多くの人々や企業が変革を実践に移しています。例えば酪農・乳製品業界では、地元での家畜用飼料の生産量を増やすこと、牧草地で育てる家畜数を増やすことを目的とする、飼育方法が定められています。
それでも将来にわたり通用するわけではない、現行の生産システムに縛られている現状もまだ存在します。そこから解放されるためには、どうすればいいのでしょうか。


直面する課題
THE CHALLENGES WE FACE
私たちの地球は現行の生産方法や消費者行動がかける負担を、もはや支え続けることができません。この問題を根本的に解決する目的で、国際連合が持続可能な開発目標(SDGs)を発表しています。オランダはこの目標の策定に大きく貢献し、目標に完全に賛同しています。
人類は、温室効果ガスの排出量を世界中で劇的に減らす必要があります。幸いなことにオランダの農業・園芸・漁業の各セクターは、必要な変革を引き起こすことが可能な状況にいます。農業セクターの企業と組織は気候変動協定のプロセスの一環として、すでに温室効果ガス排出量を削減するための共同討議を進めており、2030 年までに全体として二酸化炭素換算で少なくとも 350 万トンの排出量削減を達成することが目標です。
気候に優しいプロセスは新たな基準であり、我々はこれに主導的な役割を果たすことができます。
ただ、オランダのアグリフード(農業食品)は、世界の他の地域からの原料や基本的産品の輸入に大きく依存もしています。これを変革する必要があるのです。
また、消費者が、食料がどこから来るかを知り、生産者と産品に敬意を払うことができれば、食料破棄軽減へとつながります。このことは公平な生産者価格を実現する上で役立ちます。
農家と市民が楽しく共存できる健全な生活環境も重要な課題の一つです。


循環型農業に向けて
TOWARDS CIRCULAR AGRICULTURE
現行の農業システムは、最大の経済的利益を得ることをそれぞれの目的とする関係者で構成される一つのサプライチェーンです。関係者はそれぞれが自由に入手できる原料を使い、最小のコストで最大の収量をもたらすように加工します。ただこの従来の方法では、一つしかない地球の生物多様性や、生態系を損ねてしまう可能性があります。漁業システムでも同様です。
重要なのは、製品コストを絶えず引き下げる代わりに、サイクル内でのより効率的な利用を通じて原料の使用量を減らしていくことです。こうした転換は可能です。循環型農業に向けて取り組むことです。
この取り組みは、農業セクター内の関係者間の協力が生む経済力と、市民団体からの支援と信頼に基づいたものでなければなりません。食品安全性が最優先事項であるのは当然のことです。
これらの為に、オランダは3つの補助目標を策定しました。
循環型農業の特徴
- ・耕作農業・畜産・園芸はそれぞれのサプライチェーンからの原料と、食品産業や食品サプライチェーンから出る廃棄物フローを主に利用
- ・エネルギーを最小限に抑え、使う場合もできるだけ再生可能なエネルギーを使用
- ・家畜は主に牧草か飼料作物、または自家農場か近隣の農場から出る作物残渣の他、食品産業から出る残渣で飼育
- ・土壌管理は、加工した厩肥を施す一方で、合成肥料を着実に減らす方向へ
→合成肥料の生産に伴う温室効果ガスの排出量も減る方向へ
農業における起業家精神
循環型農業の特徴に見られる、農業関連の企業やパートナーシップの高度な多様性
- ・地元市場向けの食料生産に注力しパートナーを探す事業者
- ・グローバル市場への輸出に機会を見いだし、国際的な関係を利用する事業者
- ・上記両方のアプローチを組み合わせる事業者
- ・事業の規模拡大を目指す事業者
- ・多機能化を今後の方針とする事業者…等々
循環型農業が成功するためには、可能な農業慣行を幅広く先入観なく検討することが重要であり、そしてその実現を可能にするのが、サプライチェーン全体と政府と消費者です。
食料の重要性
消費者が循環型農業において果たすべき役割
- ・食料生産が私たちの生活環境に大きな影響を与えるということを知ること
- ・食品廃棄と闘うこと
- ・農家や栽培者から、地域市場で、そして都市農園から買うこと
→生産者と消費者の結び付きが密になり、
食品や農家の仕事に対する人々の評価を高めることになる - ・地元産品や有機産品への高い評価
オランダ政府は、大規模生産システムではなく小規模な地元産品を生産できる余地を広げていけるよう、適切な法律や規制を策定します。
革新的なグローバル事業者
循環型農業を展開する上での国際的な大きな役割
- ・海外からの原料の輸入(特に影響を受けやすい産品について)
- ・持続可能性基準を策定済みオランダの産業が、認証済みの持続可能な循環型産品だけを使用すると定めた契約を結んでいる場合もあり
→世界の他の地域での栽培の持続可能性に対して影響力を行使することができる
→環境や自然に関連する国際目標や生物多様性に対して、好ましいレバレッジ効果を発揮することができる - ・輸入品に付随する廃棄物フローを循環型の方法で処理する
オランダは EU 内で循環型農業の分野において主導的な役割を果たしており、そこへ向けてはっきりと移行することで、その戦略に対する他の加盟国の関心が増すことと思われます。
オランダ政府の目標は、オランダの強みを利用して一世代のうちに世界から飢餓をなくし、2050 年までに、持続可能な方法で 90 億人分の食料を賄うための健全な基礎を築くことです。
重点となるのは、栄養不良に見舞われやすい人々を支援することと農家や田舎の事業者の経済的見通しを強化すること、そして、食料システムの持続可能性をさらに高めることです。
循環型農業を展開する上では、国際的な側面が大きな役割を果たします。市場は国際的であり、同様に循環型システムも国境を越えて広げられます。

ビジョンから実践へ
FROM VISION TO IMPLEMENTATION
循環型農業への移行を進める上で、オランダ政府は社会の能力を頼りにしています。
実業界、市民団体、他の政府のすべての人が参画し、アイデアを持ち寄り、指導力を発揮するように呼びかけています。
2030 年までにオランダは循環型農業のリーダーとなることでしょう。農家や栽培者や漁業者に寄り添いながら、政府は積極的に取り組み、必要に応じて円滑に進める手助けをします。
基準としてのビジョン
9つの評価項目
- 1.サイクルを閉じ、排出量を減らし、食料システム全体のバイオマス廃棄を減らす上で役に立つか
-
2.漁業について、自然環境を損なわずに持続可能な漁業資源管理に寄与するか
- 3.サプライチェーンにおける農家の社会経済的立場を強化するか
- 5.田舎の魅力と活力を強化し、地域経済の繁栄に寄与するか
- 7.動物福祉が考慮されているか
- 8.食品の価値の認識と農家と市民の関係強化に資するか
- 9.気候変動に対応した生態学的に持続可能な食料システム向け統合ソリューションの開発者・輸出者として、オランダの立場を強化するか
- *これらの評価基準に加えて、食品の安全性と品質が常に基本条件として適用されます。
4.農業や土地利用の気候上の課題に寄与するか
6.生態系(水、土壌、大気)や生物多様性や、農業景観の自然面の価値にとって有益か
信頼・説明責任・尊重
成功の鍵は、循環型農業への移行において役割を果たす
すべての関係者の間に絆を築くことです。
成功の鍵は
循環型農業への移行において役割を果たす
すべての関係者の間に絆を築くことです
出典:オランダ農業・自然・食品品質省