代替タンパク質への取組み 5 – The Netherland Food Style

The Eating Style
The Netherlands Food Style

代替タンパク質への取組み 5
Future Protein NL 5

III.私たちの取り組み
Future Protein NLの5つの要素

5.転換

動物性タンパク質業界が目標設定をシフト

オランダは貴重な経験で得た知識と革新的な専門知識を組み合わせることで、動物性食品と非動物性食品のバランスを取り戻す方向に動き出しています。革新的な考え方と協働を重視することで、多くの食肉、乳製品、魚介類、卵の販売業者が転換を受け入れ、非動物性製品を製品群に加えています。オランダの大手食肉企業や乳製品企業は、味、品質、イノベーションにおける専門知識を駆使して、消費者に食肉、乳製品、魚介類、卵に代わる菜食主義者向け製品を提供しています。
動物性製品を専門としてきた企業が代替タンパク質を受け入れることで転換が促されるように、移行はさまざまな形で起こります。動物性タンパク質から代替タンパク質へと生産業務を切り替えるなど、社内から変化する企業もあれば、自社の知識、インフラ、資金を使って代替タンパク質業界のスタートアップやスケールアップ企業を支援する企業もあります。肉の消費量が減少する中、多くの大手食肉企業は、食肉を増産するのではなく、生産量はそのままで代替タンパク質部門を成長させる方向に、自社の将来の展望を見直し始めています。

成功例をご紹介します。

  • ・FrieslandCampinaは2005年にValessを発売し、乳製品を原料とする代替肉を導入しました。
  • ・ブラジルの食肉加工業者JBSは、2021年にオランダの代替肉メーカーのViveraを買収し、代替タンパク質市場に参入しました。
  • ・オランダの飼料メーカーであるNutrecoは、投資ファンドNuFrontiersを立ち上げ、Mosa Meatをはじめとする「未来の新しい飼料と食品ビジネスの開発」に着手しました。
  • ・Kennemervis GroepはBobeldijkフードグループを2020年に買収しました。もともと食肉加工業者だったBobeldijkは、Vegafitのブランド名で代替肉と代替魚を発売しています。
  • ・1858年に設立された食肉加工業者Stegemanは、製品群に代替肉を加えました。
  • ・Van Loon Groupは、アルメレの工場で英国の代替肉メーカーのMeatless Farmの製品生産を開始しました。
  • ・Vionは食肉の生産を減らし、代替肉ブランドME-AT the alternativeを立ち上げました。

    代替タンパク質業界の形成には、「意外な」企業が重要な役割を果たしています。

    肉からME-AT the alternativeへ

    VionとME-AT the alternative
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    新しい世界的バリューチェーンの構築

    動物性タンパク質の生産者は独自の知識を活用し、原料調達や規模拡大など
    代替タンパク質のバリューチェーンにおける問題を解決することができます。
    Nutreco
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    再定義「Redefine」の時代

    Redefine Meat
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    ミルクは牛ではなく大豆から

    De Nieuwe Melkboer(The New Milkman)
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    大豆はブラジル産?いいえ!

    DutchSoy、GreenFood50 Quinoa、Lekker Lupine
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IV.経験の活用

先駆的な企業の数々

代替タンパク質の分野で最も有望かつ革新的なアイデア、そして影響力のある人材、ブランド、企業が、オランダから生まれています。すでに1990年代から多くの人が持続可能な食生活への転換を積極的に訴えてきました。

  • ・1990年、Schouten Europeの設立者であるHenk Schouten氏は、オランダ初の植物性代替肉を発表しました。
  • ・1999~2005年、Harry Aiking博士はPROFETAS(タンパク質食品、環境、技術、社会)プログラムを通じて持続可能な食生活を積極的に推進しました。
  • ・2000年、Willem van Eelen氏はオランダ政府とStegeman社の助成金で培養肉の研究を進めました。
  • ・2005年、Friesland Campinaは乳製品と藻類を原料とした代替肉のブランドValessを立ち上げました。
  • ・2009年、Kees Aerts氏とTarique Arsiwalla氏はProtix insect technologyを設立し、昆虫由来のタンパク質と栄養食品の先端企業となりました。
  • ・2010年の「世界動物の日」、Jaap Korteweg氏とNiko Koffeman氏はThe Vegetarian Butcherをオープンしました。
  • ・2013年、オランダの心臓医、Mark Post氏は初の培養肉ハンバーガーを発売して注目を浴びました(Mosa Meat)。過去に例を見ないハンバーガーの立役者は食品技師のPeter Verstrate氏でしたが、当初のアイデアを出したのはWillem van Eelen氏でした。Maarten Bosch氏と Tim van de Rijdt氏もMosa Meatの成功に大きく貢献しました。
  • ・2018年、Krijn de Nood氏とDaan Luining氏は 2025年までに手頃な価格で消費者に培養肉を販売することを目指し、培養肉企業Meatableを設立しました。同社は2021年、DSMと合弁事業契約を結びました。
  • ・2018年、Viveraは世界初の植物性ステーキを発売しました。
  • ・2021年、3Dプリント技術で植物性ステーキを生産するイスラエル企業のRedefine Meatは、オランダに生産工場を設置することを決めました。

オランダは、人工知能(AI)の大幅な進歩、精密農業と垂直農業、医療分野の基礎研究など、世界的にも優れた業績を数多く残しています。分野の壁を越えた協働で、それぞれの経験を生かすことにより、オランダは最大限の効率と進歩を実現しています。

常に上を目指すカウボーイ

2045年には代替肉と代替乳製品の消費が80%、
動物性製品はわずか20%になると予想しています。
Jaap Korteweg
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「培養肉の父」の娘として

オランダはビジネスを大事にする国で、
私たちも当然ながらオランダのイノベーションを誇りに思っています。
政府、大学、業界の間には強固な協力関係があり、商業や投資にも積極的で、
これまで多くの世界的ヒット商品を生み出しています。
Ira van Eelen
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新しい体験
未来のパイオニアたち

Floor Schreuders氏 と Mike Maduro氏
– Freggies設立者より
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国際的な展望

成功要因

これまで多くのオランダ企業が、製品や生産工場を国外に送り出すことに成功しています。
そのほかの民間企業は、現在世界的な事業展開を目指しているか、あるいは国際的な進出は未定であるかのどちらかです。以下に国際化のさまざまなタイプを挙げ、成功要因や国外市場の可能性をご紹介します。

国際化のタイプ*

*国際化のタイプの順序は時系列ではありません。

  • ・貿易:国際化の第一歩となる外国企業への製品やサービスの輸出。
  • ・イノベーション:知識や革新的技術の輸出。新しい知識や革新を国際的な研究開発組織を通じて共同開発。
  • ・現地の提携企業や販売店との協働。
  • ・投資:現地の生産工場に投資し、地域市場に参入。
  • これにより輸送費やCO2排出量削減を実現。生鮮食料品や新鮮な製品を販売し、製品を地元の消費者の好みに合わせることも可能。

成功要因

新しい市場への参入を成功させるには、徹底的な調査と準備が欠かせません。成功の確率を上げるには以下の点を検討する必要があります。

  • ・現地の市場と文化に関する知識。市場規模、現地の原料調達先などに加え、現地のインフラやエネルギー源の調査が必要です。
  • ・現地の人脈や関係者へのアクセス。新規市場の調査には時間がかかります。市場参入の計画や実行に専念できる人材が不足している企業も数多く存在します。
  • ・信頼できるパートナーとの協働。
  • ・実現可能性とリスクの評価。
  • ・市場参入戦略と法的オプションの評価。輸出やローカライズに伴う輸入税や事務手続きについても検討が必要です。規制の枠組み(食品規格基準を含む)は国ごとに異なります。
  • ・助成金、輸出、開発資金の検討。他の国への事業拡大は多大なコストとリスクを伴う場合があります。このため起業家は、助成金(フィージビリティスタディの費用など)、ローン、保証を通じてリスクに対処するのが賢明です。

国外市場の可能性

外国でのビジネスチャンス

民間企業へのインタビューをもとに、民間企業が関心を示している国をピックアップしてみました。

  • ・大半のオランダ企業は欧州市場に大きな関心を寄せています。先進的で規模が大きいというだけでなく、オランダ自体が欧州にあるため地理的にも文化的にも進出しやすいからです。オランダ企業が最も有望と考えている国は、ベルギー、ドイツ、北欧諸国、英国です。
  • ・欧州外では多くの企業が米国を検討しています。原料を大規模に生産できるカナダに事業を展開する企業も少なくありません。
  • ・多くの起業家はまもなくアジアが最大の市場になると予想しています。特に中国は飛躍的な成長が期待されます。
  • ・アフリカ大陸では南アフリカ市場が代替タンパク質の最も有望な市場と考えられています。ナイジェリアも急成長している市場として挙げられます。
  • ・南米大陸はどちらかと言うと長期的な計画を想定している企業が多いようです。アルゼンチン、ブラジル、メキシコの市場が将来的に有望と考えられています。

出典:オランダ農業・自然・食品品質省